大判例

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高松高等裁判所 昭和29年(う)848号 判決

職権を以て調査すると原判決は各被告人につき一乃至五の詐欺の起訴事実につき、一については被告人小松道晴、三については被告人江口勝治の各単独の、二については被告人秋山隆伝、同江口勝治、四については被告人加用信次、同江口勝治、五については被告人宮川覚、同江口勝治の各共謀の詐欺事実を認定処断しているところであるが本件起訴状によれば右一乃至五の公訴事実は何れも被告人等五名の共謀によるものとして各被告人につき五個の詐欺事実を併合起訴していることが明らかである。

従つて右原判決と起訴状を対照すれば原判決は各被告人につきそれぞれ一部公訴事実につき何らの判断を与えていないわけである。記録を精査すると、昭和二九年二月一九日第二四回、同年四月二日第二五回各公判廷において検察官は口頭で起訴状記載の詐欺の公訴事実を全部につき各被告人等の共謀とあるのを、前記原判決認定のように各個に単独、又は被告人二名の共謀による趣旨に訴因を変更訂正する旨陳述し弁護人も之に異議なく、そのまま審理は続行されてをり、原審は右検察官の陳述に基き各被告人につき検察官陳述どおり公訴事実が除外されたものとして扱い前記の如く判断したものと解される。

思うに検察官は右陳述により一乃至五の公訴事実につき夫々一部被告人を共謀関係から除き結局当該被告人については当該公訴事実を審理の対象から除外せんとしたものと認められるが、かように数個の犯罪事実につき各個に共犯関係ありとして起訴された数人の被告人中一部被告人を特定公訴事実の共犯関係から取除くことは該被告人について当該公訴事実自体を取除くことに外ならず、かかる場合には公訴取消の方法による以外に方法なく、訴因の変更又は撤回の方法により審理の対象から除外することは許されないものと解すべきである。

しかして刑事訴訟規則第一六八条によれば公訴取消は理由を記載した書面を以てなすことを要するところ、本件では前記陳述の外かかる書面の提出された形跡もないから右陳述を以てもとより公訴取消があつたものと認めることもできない。

従つて右検察官の陳述にかかわらず原裁判所は起訴状記載の公訴事実全部について審理判断すべきであるのに拘らず冒頭記載のように一部について判断を遺脱したのは審判の請求を受けた事件につき判決をしなかつた違法があり破棄を免れない。

(裁判長判事 三野盛一 判事 谷弓雄 判事 合田得太郎)

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